SHURI
アーティスト

SHURIさんの作家としての出発点からお聞かせください。
元々自分は3歳ぐらいの小さい頃から、兄の影響でずっと絵を描いていて。中学生の時に「絵に関してのお仕事をしたいな」と思っていたんですけど、お金とかの問題で出来ないだろうな、と当時は思っていました。高校1年生の時に美術部に入ったんですけど、顧問は新卒の24歳の先生で、大会用のキャンバスの規定サイズを間違えて、本当はF30という大きさで出さないといけないのにF15という小さいのを発注してしまって。作品をそれで大会に出したら、「規定外サイズなので、どんなにいい絵でも上のほうに行けないよ」と言われて、すごく悔しい想いをしたんです。そんな時、たまたまテレビを観ていたら、明石家さんまさんが画商になって絵を売るという企画(2020年/日本テレビ「誰も知らない明石家さんま」)があって。母からは「悔しい想いをしたんだから、気軽に応募してみればいいでしょ?」と言われて。父からは「絵が上手い人はたくさんいるし、こういうのって絶対選ばれないよ」と言われたんですけど、出してみたらまさかの、4000作品以上の中から選ばれたんです。狭き門を作品が潜り抜けてさんまさんとお会いして、油彩のデビュー作『見つめる子ども』を中央オークションの社長に買ってもいただきました。その時にさんまさんに言っていただいた、「17歳はいちばん感性が爆発している時期だから、どんどん絵を描いたほうがいい」という言葉を受けて、「やっぱり私は絵の道に行こう」と決めました。そこが人生の分岐点でしたね。
SHURIさんにとって、絵を描くことにはどんな意味がありますか?
学生時代はあまりいい思い出がないんですけど、逆にそれを絵を描く糧にしていました。怒りとか悲しみ、うれしい気持ちも、もう全部作品にぶつけて「爆発させてやる!」って。絶対に見返してやる、という気持ちでずっと描いていましたし、それは今もそうですね。
実際に作品として形にすることで、気持ちは変化するのでしょうか?
まだそういうのはあまりないですね。たぶん一生自分に納得しないんだろうな、というのはあって。「もっと自信を持てばいいでしょ」と言われるんですけども、まだまだ持てないし、納得できないという感じですね。
『THREE COLORS EXHIBITION』の展示作品はどんなものになりそうですか?
感情を爆発させているので、すごく色彩豊か、というか。それも含めて、自分はバグという現象が好きで(※2023年3月、函館あうん堂にて個展『BUG』開催)。例えば、画面がバグッているとちょっと面白い感覚になるので、バグというモチーフで今描いていっています。今回は20点ぐらいの予定で、東京でも個展をするんですが、その時は40点以上展示しようと思っています。
そもそもバグというモチーフが閃いた、何かきっかけはあったのですか?
自分は結構情緒が不安定なので……バグというのは、面白い現象じゃないですか?私の絵の画面にも、喜怒哀楽がいろいろな形に散りばめてあるので、それをふと見た瞬間に「なんか、自分の絵、バグッてるみたいだな」と感じて、「あ、これだ!」と。私はバグが好きだし、「そうだ、このバグをモチーフにしよう」と思ったのがきっかけでしたね。
TERUさんはSHURIさんの集中力に刺激を受ける、と座談会でお話されていました。1日に何時間ぐらい絵を描かれているのですか?
朝7時ぐらいに起きて、練習もしないと画力が自分は落ちてしまうので、午前中は基礎練習をして、10時ぐらいから油絵を描き始めて、5時でやめてご飯を食べて。ちょっとお散歩に行ったりして、7時ぐらいからまた描き始めて、だいたい11時ぐらいになったらやめる、という感じです。昨日も1日中ずっと描いていました。
かなりの長時間ですよね。音楽を聴きながらですか?無音ですか?
音楽は大好きなのでガンガン掛けていますね。なかったら死んじゃうな、と思うぐらい音楽には心を支えられている部分はあります。
音楽でテンションを上げたり、インスパイアされたり、という感じですか?
そうです。自分は人の絵を観た時より、音楽を聴いてインスパイアされることが多いです。歩く時にも音楽をずっと聴いているんですけど、「自分がMVをつくるんだったらこういう感じで絵を描くな」とか想像していますね。音楽とその映像がずっと頭の中で流れている、という感じです。
学生時代はあまりいい思い出がないとおっしゃっていましたが、今はアート作品を通じて人と関わっていける部分もあるのでしょうか?
そうですね。元々コミュニケーションがちょっと苦手で、距離を置いていた時期もあったんですけど、やっぱり個展を開くと来てくれるたくさんの人がいて、自分の絵を観て褒めてくださったり、励ましの言葉をいただいたりして心温まることがたくさんありました。だから今は、そこを介してコミュニケーション能力を上げていっている、という状態ですね。その面に関しては絵に救われているな、と思っております。
SHURIさんが作品を生み出す時に、いちばん大事にされている軸は何ですか?
常に新しいものをつくりたい、と意識して描いていることですね。そのために、いろいろなものを組み合わせてみることもあります。以前、函館国際ホテルで個展をした時、個展をやっているとは知らない人もたくさん通る場所での展示だったので、通りがかった人がじっと作品を観ているのが面白くて。立ち止まって観てくださっている人に声を掛けると、「たまたま観たらすごいなと思った」と言われたことがありました。そういう経験を通して、歩いている人たちにいかに立ち止まってもらえるか?を意識して、「インパクトのある絵を描こう」と考えながらやっています。ただ、そう意識しながらも、やっぱり直感がすごく面白いので、頭にポンッ!と浮かんだ絵を描いていることが多いんですけども。PARAちゃんとも、国際ホテルの個展会場で出会ったんですよ。私が地元の学校を辞めて函館へ来て、国際ホテルで初めての個展をする時、共通の知人から「すごく面白い子がいるよ」という話を聞いて。「じゃあ、連れてくるね」と言われて会場で出会って今に至る、という感じですね。
『THREE COLORS EXHIBITION』の展示作品は全て完成しているのですか?
未完成なものもあって、頑張って完成させないとなぁ……というところです。
3人展後の展望、理想の未来像を教えていただけますか?
遠い未来にはなると思うんですけど、やっぱり個展をたくさん開催して、いつか世界に行きたいですね。函館から世界に行くってなかなか面白いなって。だから、そういうふうになれるように頑張ろうって、今思っています。TERUさんとも函館ビエンナーレの話をしていますし、アートに興味を持ってもらうために、いろいろな人たちとたくさんの展示をして、もっともっと函館を盛り上げていけたらなと本当に思っていて。この『THREE COLORS EXHIBITION』もきっかけとして、どんどん面白くなるんじゃないかな?と思っていますね。
SHURIさんの作品を特に届けたい相手、観てほしいとイメージしている人たちはいますか?
ここで話すのもどうかと思うんですけど、自分はONE OK ROCKというバンドも大好きで、いつかアルバムジャケットのデザインとかできるようになりたいな、という目標もあって、届いてほしいですね。あと、地元に私を慕ってくれている子がたくさんいる、という話も聞いていて。私は大学で絵を習ったこともなく独学なので、そういう自分の成長過程を見て「私も頑張ろう」と思ってもらえるような姿になっていきたいな、と思っています。